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2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

池田清彦 『構造主義科学論の冒険』(講談社学術文庫)1/2

ここ3、4年、いわゆる「科学者」ほど疑いの目で見られる人びとはいない。 この本は科学というもののどれだけの部分が論理的に精密に出来あがっているのか、逆に言えばどれだけの部分が論理的な破綻を内部に持っているかを書いたもの。あるいは、科学のかな…

辻原 登 『寂しい丘で狩りをする』(講談社)

性的暴力を受けたことのある二人の女性(仮にA子とB子とする)が主人公。二人とも、過去に暴力を受けた男から現在もつけねらわれ、命の危険もある。A子を狙う男は父・兄とも芸術院会員という階級に生まれたプロカメラマン崩れ。B子を狙うのは朝鮮引揚者…

カズオ・イシグロ 『遠い山なみの光』(ハヤカワepi文庫)

いまやノーベル賞候補と言われているカズオ・イシグロは5歳のとき父親の仕事の都合でイギリスにわたってそのままイギリス人になってしまった人である。だから日本語の読み書きはほとんどできないらしい。その「日本語が不自由な日本人」(国籍はイギリス)が…

川村元気 『億男』(マガジンハウス)

作者は何年か前話題になったTVドラマ『電車男』をプロデュースした人。知り合いに、「たまには世間で流行ってるこんな本も読んでみたら」と紹介された。 テーマをひとことで言うと「お金と幸せの関係」。『億男』というギョッとするようなキャッチフレーズ…

吉本隆明 『丸山真男論』(ちくま学芸文庫)2/2

加藤典洋が『解説』に言っていることだが、吉本隆明の書くものは何を言っているのか分からないところがときどき出てくる。私もそう思う。 二つ三つあげてみる。まず、263ページで 「『超国家主義の論理と心理』の唯一の価値は、国家として抽出される幻想の共…

吉本隆明 『丸山真男論』(ちくま学芸文庫)1/2

吉本隆明は1924年、船大工の家に生まれた。庶民の子として、皇国主義教育に骨まで洗脳されながら育った。しかしその庶民の子は、世界がひっくりかえったときには二十歳になっていた。自然科学が好きな少年だったが、自分が受けてきた体制教育の意味を捉えら…

ウィングフィールド 『夜のフロスト』(創元推理文庫)

シリーズとしては3作目。700ページを超す大部。持ち歩くときはかさばるが、作者ウィングフィールドは読者を退屈させるなどと失礼なことはしない。 あいかわらずジャック・フロスト警部は無茶なことを部下たちに言う。「連続老女切り裂き魔のくそ野郎は、現場…

加藤典洋 『人類が永遠に続くのではないとしたら』(新潮社)2/2

p102 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の被害額は20兆円だったといわれている。チェルノブイリは一基の原子炉の事故だが、福島第一は四基の事故であり、人的被害を除いた場合これ以上の損害が生じていることは確実である。 単純に、福島第一は四基だか…

加藤典洋 『人類が永遠に続くのではないとしたら』(新潮社)1/2

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』、東浩紀『動物化するポストモダン』以来、ひさしぶりに中身の濃い思想書を読んだ。毎日新聞は「3.11を踏まえた日本社会論の大力作が出たものだ」という書評を載せた。「人類が永遠に続くのではないとしたら」というタイ…