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2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ロス・マクドナルド 『さむけ』(ハヤカワ文庫)

アメリカのミステリー小説というのはあのレイモンド・チャンドラー以外に読んだことがない。そのレイモンド・チャンドラーの創りあげた名探偵フィリップ・マーロウは、本作『さむけ』の訳者でもある小笠原豊樹に言わせれば、「20世紀前・中期の非情な時代に…

吉村萬壱 『ボラード病』(文芸春秋)

ボラードとは、港の岸壁に必ずある繋船柱のこと。直径30〜50cm、大きな鋼鉄の人差し指を根元の方から地中に埋め込んだ形をしていて、地上部分の先端が少し曲がっている。もやいロープでボラードに繋げば、何万トンの巨大船でも完全に繋ぎ止めることが…

養老孟司 『講演集 手入れという思想』(新潮文庫)3/3

日本の「世間」というものの特異さ p268−9 私は死体を扱う仕事を長年やっていますので、目の前に横たわるこの人は日本の世間のどこにいた人なのだろうと時々考えてきました。日本全体という大きな世間をとりますと、まず第一に、そこに入れてもらうのは場合…

養老孟司 『講演集 手入れという思想』(新潮文庫)2/3

脳の男女差 p93−5 右脳は絵画脳、音楽脳で左脳は言葉の脳であるとよく言われます。絵画脳とは、主として空間認知をあつかう脳ということです。空間認知というのは、われわれがものがどこにあるか、物と物の位置関係がどうなっているかを把握することで、ふ…

養老孟司 『講演集 手入れという思想』(新潮文庫)1/3

安全が、ただいまの学生の行動原則らしい p62−5 東大をやめてから、いろいろな大学の大学院で講義をしています。オウム事件以来若い人たちのものの考え方に興味をもちまして、そばまで行っていろいろ学生に聞くわけです。大学院だと講座の定員は3,40人くら…

オルテガ・イ・ガセット 『大衆の反逆』(白水社)2/2

p144 満足しきったお坊ちゃんの時代 平均人というこの新しいタイプの人間の心理構造を、社会生活の方面からだけ研究すると次のようなことが見いだされる。 第一に、平均人は生まれたときから不思議な楽観を持っている。生は容易であり、ありあまるほど豊か…

オルテガ・イ・ガセット 『大衆の反逆』(白水社)1/2

少なくとも書名だけは知らぬ人のない古典である。集団として現れる大衆が「少数者が作ったよき文化」を滅ぼそうとしていることを嘆いている。しかし、オルテガの恵まれた出自は措くとしても、いかにもスペイン人らしく情に訴えるような言い分にはいささか論…

花田清輝 『鳥獣戯話』(講談社)2/2

鳥獣戯話の第三章『みみずく大名』は、1549年、フランシスコ・ザヴィエルが日本に漂着して以降、キリスト教がある程度広まったとされたことについて書かれたものだ。イエズス会が設立した学校,病院などの業績,日本国内の出来事などが報告されている『耶蘇…