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2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

國分功一郎 「暇と退屈の倫理学」4/7(朝日出版社)

暇と退屈の経済論・疎外論 p135 非正規雇用の拡大が大きな問題になっている。だが非正規雇用は、単に誰かがズルしているから生み出されたものではない。いかに高品質のケータイでもクルマでも、同じ型である限りすぐに売れなくなるという、現代社会の消費(…

國分功一郎 「暇と退屈の倫理学」3/7(朝日出版社)

定住生活と退屈の関係 p79 一万年前に中緯度帯で定住生活が始まるまで、人類はそのほとんどの時間を遊動生活によって過ごしてきた。だが氷河期が終わった一万年前になると、温暖化が進み、中緯度帯が森林化して、遊動生活の中心になる狩猟が困難になった。 …

國分功一郎 「暇と退屈の倫理学」2/7(朝日出版社)

暇と退屈の原理論(パスカルと退屈) p33 パスカルは相当な皮肉屋である。彼には世間をバカにしているところがある。そのパスカルは退屈をこう考えている。 「人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられないがために起こる。部屋でじ…

國分功一郎 「暇と退屈の倫理学」1/7(朝日出版社)

著者は達意の文章を書く37歳の若い哲学者である。ちょうど私たちの子供世代だが、こんなスピノザ学者がいるとはまったく知らなかった。この本には著者が大学院生だったころの「暇と退屈の苦しみ」が本音で書かれてある。あとがきに書かれているように「斜に…

金原ひとみ 「トリップトラップ」(角川書店)

辻原 登が毎日新聞「二○一○年の三冊」に挙げていた短篇集。作者のデビュー作で芥川賞受賞作でもある「蛇にピアス」もそうらしいが、病的な男性依存症があっけらかんと書かれていて、読み始めたときは、いまどき冗談かアイロニーなんだろうと思った。 女性に…

辻原 登 「闇の奥」(文芸春秋)

伝説の小人族という、現生人類の進化上で切り離されかけたネアンデルタール系の人々を、ボルネオから雲南、チベットという闇の奥深くに探しまわる冒険譚である。辻原は、人の闇のいちばんディープなところに入っていって、そこを「新石器人の謎」ではなくエ…

オルハン・パムク 「白い城」(藤原書店)

トルコに、西欧の「知」が生まれようとするときの物語である。 p69 十七世紀、その細密画はわれわれを満足されるには程遠い代物だった。「まったくもって昔のままだ」と師は言った。「万物は立体的に捉えられ、真の影を持つべきであるのに。そこらの蟻でさ…

岩井克人 「二十一世紀の資本主義論」(ちくま学芸文庫) 3

p63−6 基軸通貨とは、すべての国のすべての商品と交換できるまさに「グローバル市場経済の貨幣」である。ドルが基軸通貨であり続けるのも、「ドルは誰もがそれを未来永劫にわたって受け入れてくれる」という脆弱な「予想の無限の連鎖」があるからにほかなら…

岩井克人 「二十一世紀の資本主義論」(ちくま学芸文庫) 2

p22−4 市場経済の中で、人びとは公共の利益を促進しようと意図する必要などない。自分の安全と利得だけを考えればよい。私的な悪は公的な善となる。・・・アダム・スミスの「見えざる手」の理論は、世にある数少ない真の理論である。 ただひとつ、アダム・ス…

岩井克人 「二十一世紀の資本主義論」(ちくま学芸文庫) 1

岩井克人はとても文章の上手な経済学者である。東大での講義は学生に人気があり、専門のマクロ経済学にとどまることなく文明論全体にわたるものだったという。井原西鶴の『世間胸算用』を貨幣論から分析した『西鶴の大晦日』というエッセイがあるが、その読…