2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧
マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや いうまでもなく寺山修司の代表作のひとつである。田沢拓也という人の『虚人 寺山修司伝』では、下敷きとして富沢赤黄男の「一本の マッチをすれば 湖は霧」があって、その盗用だと決めつけら…
企業の値打ちの分かりやすい算出方法の一つに<発行株式の時価総額マイナス負債総額>というのがあるそうだ。これによれば「企業価値の最大化」は、当たり前だが、株主利益の最大化であるということになる。従来からも大株主は毎年莫大な配当所得を得ている…
「ドストエフスキーの生活」 p12 子供の死は、母親にとって掛替えのない歴史上の一事件である。どのような場合でも、人間の理知は、掛替えのなさというものについては、なす処を知らない。愛児の遺品を前にして、母親の心に、このとき何がおきるかを考えれ…
言うことは五十ページあれば尽くせるのに、新書として二五○ページを持たせるためのつまらない冗舌があふれる凡書の典型。光文社のたぶん販売部の編集である。 著者の東京外国語大学の学長は、理屈っぽさを嫌う人たち向けの「平易な理屈」使いに長けた人間で…
[意図せざる結果という逆説] われわれに自分たちの決定的な限界を見せつけ、『鉄の檻』となって、逃れえない力を人間の上にふるうようになった『合理的生活態度』は、では一体なぜルターやカルビンのキリスト教的禁欲の精神から生まれたのだろうか。ルターや…
[いわゆる『欧州中心主義』] 丸山真男は、基本的にお人好しな思考法が日本の歴史意識の古層にあると言う。「制度」あるいは法体系を、「どこかよその誰かが」「秋に稲穂が実るようにいつのまにか」作ってくれた便利なものとする思考法である。それは、絶対者…
p49 液体の水は、単純な水分子の集合体ではない。水分子、ヒドロニウムイオン(H3O)、水素イオン(H)、水酸化イオン(OH)などが大小さまざまなクラスターを作り、ブラウン運動によって動き回っている複合体である。 p53 キセノンなどすべての全身麻酔薬…
素数の出方に方程式はまだない。ある素数に続くようにすぐ次の素数が現れるかと思えば、次が現れるまでかなりの間隔があく場合もある。その出現間隔はまったく気まぐれに見える。この気まぐれは数が大きくなっても変わらない。 1,2,3,5,7,11,13,17,19,23,29,…
創建法隆寺が天智天皇の指示による放火で失われたという推理は(もはや常識に近いらしいが)面白く説得性があった。しかし、本一冊として言いたかった<北極星からの南北軸を絶対視するヨーロッパ―中国とは全く異なる、人々が住む風土に合わせた日本の多軸的…
[ヴェニスの商人の資本論] p68 あらゆる差異を解消する資本 資本主義の前には、どのような価値体系も孤立し閉鎖されたままではいられない。なぜなら、孤立や閉鎖が意味する独自性や異質性は、すべて資本主義にとってはおいしい「差異」の一形態に過ぎないか…
この何年も、メディアとメーカーが大キャンペーンを張り続けている「地球温暖化の元凶はCO2だ」説は本当だろうか。「正義の物語」につきものプロパガンダは、そこにないだろうか。「正義」は、過去にローマカトリックや西側反共陣営が相手を非人間におとしめ…
厚顔と偽善と怯懦の真ん中に、廉潔と誠実と果敢の遠弓を射込むような馬場あき子の短歌。彼女の定型は、日本語にとっては自由律などというものがだらしなさの美名でしかないことの証明である。 ・母の齢はるかに越えて結う髪や流離に向かう朝のごときか (飛…
読み終えて数日経つと、夢のシーンの連続であったような、残酷だが穢されてはいないチェスをめぐる不思議な物語が、読んだ人のなかにもう一度染みわたってくる。 p154 チェスの終盤が近づくと、達者なルークづかいのお転婆だった令嬢の動きが少しずつしとや…
「偉大な歴史」の翳りがまだ始まっていなかった二十世紀中盤のアメリカ。探偵フィリップ・マーロウは、事件解決の翌日にもまた同じような騒動に巻きこまれるだろう。国民が自国(を世界と思うほど)の大きさと資源と軍事力に自足しきったところにだけ成り立…
p90 眼球の動かない深いノンレム(NON Rapid Eye Moving)睡眠に入ると、人間が計画、論理的思考、問題解決など高度な情報処理を行う前頭葉前部皮質は、真っ先にそして急激に活動を低下させる。この活動低下に伴って、活動を支えていたセロトニンとノルエピネ…