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2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

砂田利一・長岡亮介・野家啓一 『数学者の哲学・哲学者の数学』(東京図書)1/2

砂田氏は数学者、長岡氏は数学史専攻、野家氏は哲学者。世の中を少しだけむずかしく考える人には魅力的なタイトルの本だ。「まえがき」で長岡氏がこの本が一般人向けに出した趣旨を端的に書いている。それはこの本を、「世の中、経験こそすべて」とか「考え…

カレル・チャペック 『山椒魚戦争』(岩波文庫)

『山椒魚戦争』は昔から、奇妙なタイトルのせいでずっと読みたいと思っていた本だった。それが今回金森修『ゴーレムの生命論』に示唆されて『ロボット』を読み、ついでだからということでこの『山椒魚戦争』も読んでみた。 駄作ではなかった。 故国・チェコ…

カレル・チャペック『ロボット』(岩波文庫)

ヨーロッパにはユダヤ教のラビが魔術によって作る「ゴーレム」という「人造人間」の言い伝えがある。本書はそのことを書いた金森修『ゴーレムの生命論』に教えられて知ったもの。著者カレル・チャペックはチェコ出身で『兵士シュヴェイクの冒険』を書いたヤ…

内田 樹 『もう一度 村上春樹にご用心』(ARTES)2/2

村上春樹だけが、「時代が激しく欠いているもの」を書く。 p124 鋭敏な作家は、彼の時代に過剰に存在しているものについてはあまり書かない。書いても仕方がないからだ。拝金主義的なサラリーマンを活写しても、情緒の発達が遅れた非常識な青年たちの日常を…

内田 樹 『もう一度 村上春樹にご用心』(ARTES)1/2

村上は、「政治的弱者」ではなく、「本態的に蝕まれた人」を書く。 そのことが村上を世界的作家にしている。 p47 2009年、エルサレム賞の受賞スピーチで村上春樹は反骨の気合の入った有名なスピーチをした。私・内田がもっとも注目したのは(その後繰り返し…

ウィングフィールド 『冬のフロスト』(創元推理文庫)

養老孟司さんが激賞している現代イギリス警察小説「ジャック・フロスト警部シリーズ」の、邦訳のあるものでは最後のもの。 養老さんが「あとがき」で言っていることだが、主人公フロストは一種のアンチヒーローである。人智を超えた推論の力で難しい事件を解…

内田 樹 『一人で生きられないのも芸のうち』(文春文庫)

イスラム原理主義者はニッポンをバカにしている P35−6 私は以前、どうして日本ではイスラム原理主義者のテロが起こらないかについて考えた。そのときに、日本でテロをしたら「テロリストから村八分にされる」からではないかという推理をしたことがある。なぜ…