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獅子文六

獅子文六『箱根山』ちくま文庫

箱根温泉郷の二大老舗旅館である玉屋と若松屋は、もともとは一つの経営体であったのが、いまは何かにつけて相争うライバルの仲。片方の玉屋側には、旧ドイツ軍下士官フリッツと部屋係女中の間に生まれた勝又オットー(乙夫)という17歳の優秀な若番頭が育ち…

獅子文六 『断髪女中』 ちくま文庫

短編集。目立ったものはないが、ひどいものもない。それにしても読んだそばから、どんな話だったか忘れて、読み終わって数日しかたっていないのに何にも覚えていない僕のアタマはどうなっているのか。 学生のとき小林秀雄のようなものばかり読んできたから、…

獅子文六 『悦ちゃん』 ちくま文庫

なかなかの名品。作者らしくストーリーはどこまでもシンプル。1時間に70頁は読める。それでいて読者を飽きさせず、むりなくハッピーエンドに持ち込んでいく。以下は解説の一部をそのまま引く。 「主人公悦ちゃんと碌さんを取り巻く人々が魅力的だ。碌さん…

獅子文六 『金色青春譜』 ちくま文庫

獅子文六の初期小説集。『金色青春譜』と『浮世酒場』、『楽天公子』が入っている。獅子文六が新聞小説家として独り立ちする契機となった3作である。 『金色青春譜』は尾崎紅葉の『金色夜叉』、『浮世酒場』は式亭三馬の『浮世風呂』などの戯作が下敷きにな…

獅子文六 『ロボッチイヌ』 ちくま文庫

短編集。全体の表題作「ロボッチイヌ」は出色の出来。ロボッチイヌとは成熟した女性のあらゆる体徴をそっくりそのままに備えた人工売女。本物女性の体温、皮膚の湿り気、柔軟性、香気までを備えている。貞女型、娼婦型、乙女型、年増型、オバサマ型があり、…