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獅子文六 『ロボッチイヌ』 ちくま文庫

 短編集。全体の表題作「ロボッチイヌ」は出色の出来。ロボッチイヌとは成熟した女性のあらゆる体徴をそっくりそのままに備えた人工売女。本物女性の体温、皮膚の湿り気、柔軟性、香気までを備えている。貞女型、娼婦型、乙女型、年増型、オバサマ型があり、それぞれ大中小の3サイズがある。

 これが全国的に大評判をとる。才女たちは重大な女性侮辱と騒ぎ立てるが、一般の主婦たちは夫の浮気を防げるとあって、もろ手を挙げて賛成。施行された売春防止法のザルの目も完全にふさがり、日本は売春婦のいない国として、世界に名をはせることになる。やがて処女のしるしである部品をつけた改良型も登場し、これが昔ながらの処女・イヴとの結婚にこだわるアメリカ青年の心をもとらえて、ロボッチイヌ人気を爆発的なものにする。

 ところが意外なところから情勢が悪化する。日本でロボッチイヌに婚約者を奪われた善良な娘たちの結婚恐慌がおこって、東京千住の工場を襲撃したのだ。この襲撃は銀座の女給さんたちも商売がヒマになった恨みで大いに盛り上がり、ついに工場は彼女たちの管理下に入ってしまう。そして、あろうことか、彼女らはロボッチイヌの男性版を作って世に出してしまう・・。

 かくして男女そろったロボッチイヌが全国に広がり、日本中に性の平和が到来することになった・・・。