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井上ひさし 『吉里吉里人』 新潮社

 850ページ、2500枚の大作。初読は刊行当時の1982年だからほぼ40年ぶり。

 名作、それもシェイクスピアに匹敵すると思われる大名作。シェイクスピアには格調高い大演説と、駄洒落ダラダラ混じりの長広舌が一つの作品の中でいくつも混在するが、『吉里吉里人』でもこの点はまったく同じ。過剰ともいえるほどの豊富な語彙を駆使しながら、読者を爆笑させる冗談話を続けるかと思うと、次の段落では「山上の垂訓」を連想させる高度な国家論、医学論、農業論、言語論を展開させる……。

 漱石の『猫』と競い並ぶ日本近代文学史上の最高峰の一つだろう。長いので読破には時間がかかるのも共通ではある。