アクセス数:アクセスカウンター

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夏目漱石 「文学評論」(岩波文庫)上巻 2

p191 レスリー・スチーブン「十八世紀における英国文学および社会」 十八世紀初頭スウィフト、ポープ、アジソン、スチール等、文学機関を組織したものは(自分たち富裕国民が主人であるという、歴史上初めて登場した)国家を未曾有の重要な地位に据えた。そ…

夏目漱石 「文学評論」(岩波文庫)上巻 1

p28 創作に失敗した者ばかりが批評家になるということは事実ではない。馬に乗りそこなった者ばかりが自転車に乗るといわれたとて、自転車乗りが面目を落とすことはないはずである。 小林秀雄の東大時代の創作は読むに耐えないが、小林の例えば一連の『ドス…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 5

p212 政治思想はいままで、あまりにも理性を信じすぎてきた。実際には人間の能力には限界がある。人間は理性だけでは社会の複雑さに対応できない。だとすれば、社会の基盤は、個人の理性よりも、むしろ「群れる動物」としての人性そのものに求めたほうがい…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 4

p117 ルソーの『社会契約論』を現代の情報技術に照らして読み直すことで、わたしたちは一般意志2.0という新しい概念を手に入れた。それは具体的には、これからの政府は、市民の明示的で意識的な意志表示(選挙、公聴会、新聞の投書欄などなど)だけに頼らず…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 3

p89・9・91 以下、ルソーに唱導された一般意志を一般意志1.0と呼び、それを総情報記録社会の現実に照らして捉えなおし、アップデートして得られた概念を一般意志2.0と呼んでいく。 一般意志1.0は現実には実在しない。それは抽象的な理念に過ぎない。けれど…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 2

p74・77 政治思想には「熟議民主主義」と呼ばれる考え方がある。民主党政権がやたらと「熟議」という言葉を使いたがる背景にはこの思想がある。政治学者の田村哲樹によれば、熟議民主主義とは「集合的意志決定の正統性の源泉を、諸個人の意志にではなく熟議…

東 浩紀 「一般意志2.0」(講談社) 1

p23-4 「一般意志」とは、それを自身の『社会契約論』の中で記したルソーの時代には、(個人つまり特殊意志の対概念であると今でも誤解されていることの多い)まったくの虚構、『言語起源論』における「詩人の言語」や『人間不平等起源論』における「野生の…

夏目漱石 「坑夫」(岩波文庫)

p69 いい身分の親を持った自分が窮して坑夫になるという切羽詰まった時でさえ、自分は赤毛布一枚の浮浪者よりは上に見られたいという虚栄心を持っていた。泥棒に義理があったり、乞食に礼式があるのも全くこの格なんだろう。 p70 世間が、心は固形体だから…

朝吹真理子 「流跡」(新潮社)

若い(美しいかどうかは知らない)女性の文章であることは明らかなのだが、そうした俗事を少しも感じさせない、透きとおった清清しい才能である。原稿のパソコン画面を見るのとはもうひとつの目でいつも男性を意識している、生っぽい意地やうらみごとなどが…