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2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

マイケル・ギルモア 『心臓を貫かれて』 (文春文庫)1/2

ノーマン・メイラーの大ベストセラーでありピューリッツアー賞受賞作にもなった『死刑執行人の歌』と同じ題材を、死刑囚本人ゲーリー・ギルモアの末弟マイケル・ギルモアがノンフィクションにまとめたものである。ノーマン・メイラーの『死刑執行人の歌』と…

村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』2/2

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹版 カフカの『城』である、という人もいるに違いない。 カフカの『城』には、読み続けることが困難になる 「とりつく島のなさ」 がある。城の役人が城下の人に対して過酷なことをするわけではない…

村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』1/2

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹が世界的作家となって二作目の長編である。 村上春樹が自分の作品に外国語への翻訳許可を与えたのは『羊をめぐる冒険』が最初だった。それまでの村上は、「音楽、とくにジャズに詳しく、日本の都市…

夏目漱石 『三四郎』(新潮文庫)

夏目漱石の作品で読んだものをあげろと言われれば、多くの人は『坊ちゃん』、『猫』、『草枕』、『三四郎』といった順番で答えるだろう。なぜだろう。『猫』はともかく、『坊ちゃん』と『三四郎』は主人公が未来ある青年なので、近代日本の青春小説の古典と…

鈴木健 『なめらかな社会とその敵』(勁草書房) 2/2

ではその「なめらかな社会の敵」とは何なのか。怪書ともいえるこの難解な書物を要約するのはとても難しいが、「なめらか」の敵といえば、ごつごつとして手触りの悪いもの、目障り、耳障りになるものであるにちがいない。上記のソーシャルネットワークを説明…

鈴木健 『なめらかな社会とその敵』(勁草書房) 1/2

世界はあまりにも複雑である。古代エジプトの世界も複雑だったろうが、古代ギリシアでも、中世ヨーロッパでも、そして、2000年ごろにはっきりし始めた現代のコンピュータネット社会でも、世界はとても複雑である。過去どのような哲学でも、世界の理解をやさ…

グレッグ・スミス 「訣別 ゴールドマン・サックス」(講談社)

JPモルガンやチェース・マンハッタンと並ぶ世界最有力投資銀行のひとつであるゴールドマン・サックスの内部告発の本だ。そこで優秀な投資ディーラーとして栄進の道を登ろうとしていた三十四、五歳の著者グレッグ・スミスが、(日本でいえば課長時代に)それ…

内田 樹 「街場の文体論」(ミシマ社)2/2

僕たちは知らずにエクリチュール(階層的に縛られた言葉)を使っている p121-25 「エクリチュール」というのは、ある言語の中における「局所的に形成された方言」のようなものと理解してください。日本語で言えば「大阪のオバちゃんの話し方」、「「やんき…

内田 樹 「街場の文体論」(ミシマ社)1/2

内田樹の神戸女学院大学での最終講義 「クリエイティブ・ライティング」を一冊にまとめたものである。人気教授の最終講義とあって、学外からの聴講者も多く、同僚教員も多数詰めかけて盛況だったらしい。 司馬遼太郎の美学は日本人だけのためのもの p98−100…