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2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹 『ノルウェイの森』(講談社)

一九八七年、刊行の年に読んで以来だ。三九歳のときで、村上春樹は初めてだったと思う。大ベストセラーということで読んだのだろう。再読して、直子という主人公の恋人が(当時は精神分裂症と言われていた)統合失調症で自殺する話だということしか憶えてい…

白石隆 ハウ・カロライン 「中国は東アジアをどう変えるか」(中公新書)2/2

言語の力と「ハイブリッド・チャイニーズ」 p170-175 私たち日本人が使う「中国」という概念は輪郭のはっきりしないものである。同様に中国人、華僑、華人、華裔なども、彼らを範疇分けしようとすると、その意味がはっきりしなくなる。つまり日本語には英語…

白石隆 ハウ・カロライン 「中国は東アジアをどう変えるか」(中公新書)1/2

華夷秩序はいまも生きているか p27 訒小平時代以前から、中国では対外強硬論が間欠泉のように噴出していた。訒小平、江沢民はこれを抑え込み、「能力を隠して力を蓄え、力に応じて少しばかりのことをする」ことを対外強硬論者に許してきた。しかし胡錦濤は…

内田 樹 「街場のメディア論」(光文社新書)

「気づかない」ふりをする朝日の論説委員 p38・49 いま、ジャーナリストがはなはだしい知的劣化を起こしています。テレビや新聞の凋落の最大の原因は、インターネットよりもむしろジャーナリスト自身の知的劣化にあると僕は思っています。 数年前、朝日新聞…

カズオ・イシグロ 「日の名残り」(ハヤカワepi文庫)

「従僕の眼に英雄なし」というヘーゲルの名文句があるそうだ。ただしヘーゲルは、「それは英雄が英雄でないからではなく、従僕が従僕だからだ」と言い添えているらしい。食事の世話をしたり靴を脱がせたり身の回りの雑用ばかりをやっている下男にかかると、…

デイビッド・ブルックス 「人生の科学」(早川書房)

変なタイトルの本だ。朝日新聞の書評を読んで、「無意識」があなたの一生を決める、とあってなにげなく注文の電話をしたのだろうが、届いた表紙を見てみると気恥ずかしくなったのを覚えている。この年で「人生の科学」でもあるまいと思って、一年以上も本棚…

内田 樹 「女は何を欲望するか」(角川新書)

p7 「言語は社会的に性化されている」というのは本当か フェミニズムは今ではもうメディアや学術研究の場での中心的な論件ではなくなっている。大学ではまだ教科書的に「ジェンダー・スタディーズ」が教えられているが、そのステイタスは一時期の「マルクス…

村上春樹 「羊をめぐる冒険」 (講談社文庫)2/2

p105−6 「僕」と「相棒」の会話・・・この小説全体の「黒幕」について・・・「黒幕」は『1Q84』の柳屋敷の老婦人を男にし、もっと犯罪的右翼にしたものである。 相棒 「黒幕」は一九一三年に北海道で生まれ、小学校を出ると東京に出て転々と職を変え、右翼…

村上春樹 「羊をめぐる冒険」 (講談社文庫)1/2

『羊をめぐる冒険』は、村上春樹が今日的な「世界作家」としての評価を獲得する足がかりを得た記念碑的作品らしい。この小説以降、村上作品は海外でも大部数が売れ始めるのだが、村上春樹はいまも、『羊・・・』以前の作品には翻訳許可を与えていない。それ…