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2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)3

反ユダヤ主義 p104-5 生来邪悪な人間や過度に利己的な人間だけが反ユダヤ主義者になるというのなら、私たちは気楽である。そんな人間なら簡単にスクリーニングできる。しかし最悪の反ユダヤ主義者はしばしばそうではなかった。むしろ信仰に篤く、博識で、不…

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)2

十九世紀的思考法 p85-6 十九世紀の人は、あらゆる事象は因果の糸で緊密に結びついており、その糸を発見することこそが「科学的思考」だと深く思い込んでいた。だから「近代科学主義者」たちは例外なく政治過程を機械のメタファーで考えた。ある政治的「結…

内田 樹 「私家版・ユダヤ文化論」(文春新書)1

ユダヤ人とは誰のことか? p26 イエスはガリラヤのユダヤ教共同体の内部に育ち、アラム語で布教活動を行った。ガリラヤはユダヤ教にとっては辺縁にあたる地であり、のちに彼は、彼の成功に嫉妬した同業のラビに讒言され、刑死した。福音書はイエスがそのと…

黒岩比佐子 「パンとペン 堺利彦・売文社の闘い」(講談社)2

p224 大逆事件と大阪朝日新聞 一九一一年一月、朝日新聞は判決翌日の社説で、政府発表を鵜呑みにした権力への見事なすりよりを見せている。 「今回二十四人の性行及び経歴を見るに、一も常識を有する人類として数えるべきものにあらず。いずれも社会の失敗…

黒岩比佐子 「パンとペン 堺利彦・売文社の闘い」(講談社)1

一九一○年十二月、いわゆる大逆事件が起きた。幸徳秋水ら二十四人が検挙され、審理は秘密法廷の一審だけで終了し、翌月二十四日に幸徳秋水ら十一人、一人管野スガだけが翌朝絞首刑になった。幸徳秋水、管野スガら四人は当時の法律に照らせば有罪だったが、残…

安部公房 「箱男」(新潮文庫)

いささかお手上げの小説だ。全部がメタファーというのはわかる。この世が生きるに値しない、主人公が世界と親しむ接点も本来はない、ということもその通りである。一枚の段ボールがその断絶の象徴として描かれている。段ボール箱以外に「この世」らしいもの…

安部公房 「鉛の卵」(新潮文庫)

今から80万年後、鉛の卵の形をしたタイムカプセルの中に80万年間冷凍保存された「古代」つまり現代の人間が、80万年後の未来人類の前に突然姿をさらすことになったという話である。 そのとき未来人類は、「市民」と「どれい族」に社会分化しており、「…

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 「アメリカにいる、きみ」(河出書房新社)

p7 (合衆国の父祖の地であると言う人もいる)最東部メイン州の、白人ばかりが住む小さな町で、アフリカから来たおじさんは近所の人たちから「リスが姿を消しはじめた」と言われたそうだ。近所の人たちは、おじさん達アフリカ人は野生の動物なら何でも食べ…

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 「半分のぼった黄色い太陽」(河出書房新社)

(本書の主人公であるイボ人たちの)ビアフラ国旗は赤・黒・緑の帯の中央に「半分のぼった黄色い太陽」が輝いている。 ナイジェリアは北部、南西部、南東部(ビアフラ)で民族と言語と社会状態が大きく異なっている。イギリスは自分に都合のいいように、北部…