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2021-01-01から1年間の記事一覧

宮部みゆき 『理由』 朝日文庫

秀作だ。ローン返済に行き詰まったタワーマンションで、4人の死体が発見される。1人はベランダからの転落死で、残りは何者かに刃物で殺されたようだった。当初、4人は家族だと思われていたが、捜査が進むうち、実は他人同士だったことが明らかになる。他人の…

池澤夏樹 『世界文学を読みほどく』 第十四回 総括

p392・402-3 私たちの世界観には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、世界は樹木状の分類項目に従う、つまりディレクトリのある、例えば動物・植物の分類表のような形をしているという考え方。いくつかの大きなカテゴリーがあって、その下にまたい…

池澤夏樹 『世界文学を読みほどく』  第九回 フォークナー『アブサロム、アブサロム!』

「銃社会」アメリカの起源 p267-8 かつてのアメリカの場合、町を造るとすると、西部劇で見るように、その町は大平原の真ん中に造られて、独立あるいは孤立して存在します。周囲との関係が非常に薄い。すべて自立、自治でやらなければいけない。 ということ…

池澤夏樹 『世界文学を読みほどく』 第五回 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(新潮選書)

池澤夏樹は京都大学の依頼で2004年9月15日から一週間、「世界文学を読みほどく」という特殊講義を行った。実際に創作活動をしている人が語ると、ふだんの講義の中で大学の教員たちが語る文学の読み方とは違う掘り下げ方をしてくれるのではないかという、大学…

大岡昇平 『花影』

どうと言うことのない花街小説だが、解説で本作がモデル小説であることが暴露される。小林秀雄、中原中也、坂口安吾、青山二郎、白洲正子などの面々が作中人物の誰それと具体的に示されていて驚く。

ロレンス・ダレル 『ジュスティーヌ』

学生時代と1980年に続いて3読目だが、今度は独特の心理分析や都市と文明の描写が難解すぎて読めなかった。70年と80年にも難しかったが、ついていこうとする気構えだけはあり、身体で理解しようとする突進力で読み進んだ。今回それができなかったのは、年齢の…

香原志勢 『人体に秘められた動物』

足、脚、寝姿の姿勢の多様さ、眼、口、顔・・・、人間の身体の各部の形態を捉えて、それが魚類以降どういう変遷を遂げ、いまの人間という動物ができあがってきたのか、その変遷にはどんな淘汰圧がかかって今の形に落ち着いたのか、などが巧みな文章でつづら…

村上春樹 『ノルウェイの森』

1987年、2013年そして今年2021年と3度読んだ。私の大好きな感傷的リアリズム小説の最高峰と思う。今回は上下2巻を2日間で読んだ。 p223 直子が自殺を遂げた直後、「僕」が1か月間あちこちを放浪して彼女の死の衝撃に耐えようとしている箇所に少なからず揺さ…

夏目漱石 『坊っちゃん』(春陽堂文庫)

言われていることだが、主人公坊っちゃんは漱石自身ではない。漱石は憎まれ役・赤シャツとして登場している。21歳の坊っちゃんはターナーもマドンナもゴーリキーも知らない。赤シャツはもちろんそれをすべて知っていて、生徒にもその方面の知識と教養を与…

本ブログに寄せられた不思議なコメント

このブログで10年前に書いた『数の不思議』という記事に、今朝それこそ不思議なコメントが寄せられた。私はそのコメント内容に唖然とするだけで、コメントをいただいたお礼も何もできなかった。 10年前に書いた『数の不思議』は以下のようなものである。 <…