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村上春樹 『ノルウェイの森』

 1987年、2013年そして今年2021年と3度読んだ。私の大好きな感傷的リアリズム小説の最高峰と思う。今回は上下2巻を2日間で読んだ。

 p223 直子が自殺を遂げた直後、「僕」が1か月間あちこちを放浪して彼女の死の衝撃に耐えようとしている箇所に少なからず揺さぶられた。

 どのような人生の真理をもってしても愛するものをなくした哀しみを癒やすことはできない――、直子の死が僕に教えたのはこういうことだった。どのような真理も、どのような誠実さも、どのような強さも、どのような優しさも、その哀しみを癒やすことはできない。我々はその哀しみを哀しみ抜いて、そこから何かを学びとることしかできないし、そしてその学びとった何かも、次にやって来る予期せぬ哀しみに対してはまったく役立たない。