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2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 3

リトルロックについて考える p261 トクヴィルは一世紀も前に、権利の平等とともに、機会と条件の平等がアメリカの「法」であると語っている。平等性の原則に固有のジレンマが、社会にとってもっとも危険な挑戦になると予言していたといえる。すべてを平等に…

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 2

道徳哲学のいくつかの問題 p69 真の道徳的な問題が発生したのはナチス党員の行動によってではない。いかなる信念もなく、ただ当時の体制に<同調>しただけの人々の行動によって、問題が発生したことを見逃すべきではない。そして、これらの<普通の人々>…

ハナ・アーレント 「責任と判断」(筑摩書房) 1

プロローグ p8 かつてヨーロッパでは、緊急の際には国民生活の多様性を犠牲にしてでも「国家の統合」を維持すべきだと考えられたていた。しかし現在(一九七五年)ではすべての政府が官僚機構に転落しかかっており、こうした考え方は崩壊した。アメリカも例…

ウィリアム・ジェイムズ 「心理学」(岩波文庫)

翻訳者の「あとがき」にあるように、刊行後百年以上たっても一定以上読まれ続けている心理学研究の名著である。脳や神経系統の生理学方面については、今日の研究成果が著しいので、ジェームズの説はまったく読む必要はない。 『プラグマティズム』の著者であ…

E.M.フォースター 「眺めのいい部屋」(みすず書房)

p53 家柄と立ち居振る舞いと見破られぬ偽善にしか自分の存在理由を見出せないイギリス・ブルジョア婦人。その描写の仕方の好例。「ミス・アランはいつもこのように自分の判断に対して、慈悲深かった。一貫性を欠いた彼女の話には或るかすかなペーソスが漂い…

E・M・フォースター 「天使も踏むを恐れるところ」(みすず書房)

p71 歯医者はやっかいな存在であり、イギリスでもイタリアでも歯医者をどこの階級に入れたらいいか困ってしまう。知的専門職と商人の間をうろうろしている存在なのだ。 p79 イタリアではじつにいろいろなことを心配することができる。郵便配達人はジーノの…

グレアム・グリーン 「情事の終わり」(新潮文庫)

p137 あの頃が最もひどい時代だった。想像すること、イメージにおいて考えることはわたしの職業だ。一日に五十度も、そして、夜半に目をさませばたちまち、幕が上がって芝居が始まる。いつも同じ芝居、故意のたわむれをしているサラ、わたしと彼女がしたの…

シュンペーター 「経済発展の理論」

上巻三分の一で放棄した。二十代に書いたそうだが、若書きのせいばかりとも思われないドイツ語複文構造のわずらわしさに耐えられなかった。その文体のせいか、わたしの経済学方面の基礎知識の貧困のせいか、ぺダンティシズムの悪臭にも耐えられなかった。あ…

漱石文明論集 2(岩波文庫)

「私の個人主義」 p132 いくら私が汚辱を感ずるようなことに出会っても、助力を頼みたい相手の気が進まないうちは、決して助力を頼めない、そこが個人主義の淋しさです。個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らかにして去就を定めるのだ…